まっすぐな想いは、いつも愛『TOKYO,I LOVE YOU』レビュー



まずは本作でメガホンを握った中島 央(なかじま ひろし)という人物を知っていただきたい。

熱狂的な映画ファンだった父親の影響で子供の頃から浴びるように映画を観てきた彼は、アメリカで映画製作を学び、脚本家としてハリウッドでキャリアをスタートさせた映画監督であり、“ハリウッドが生んだサムライ”と呼ばれている。そんな中島監督が作品に込める一番のこだわりは「愛」。さまざまな愛の形が世に溢れるなか、彼のまっすぐな想いはいつもフィルムに収められている。

ロサンゼルスで撮影し、アメリカ人キャストとスタッフで製作した全編英語の初長編作『Lily』(2011年)は自身をモデルにしたラブ・ストーリーであり、海外の映画祭で多数の受賞歴を誇っている。また、子供たちの夢を叶えるために製作した『アンライバルド』(2012年)が「調布映画祭2012」にてプレミア上映を果たし、さらには再びアメリカ人スタッフとキャストで製作された全編英語作『シークレット・チルドレン』(2014年)なども手掛けてきた。

彼のまなざしの先には、常に世界に通じる作品を生み出すことであるのは明白だが、筆者はずっと疑問に感じてきた。“なぜ、日本を舞台にした映画を撮らないのだろう”と。ゆえに『TOKYO,I LOVE YOU』は中島監督にとって満を持した初長編邦画であり、海外でも通用する「東京」と「愛」をストレートに抽出し、そのままのタイトルにした理由も察することができる。

幼馴染み・親子・仲間という3つのキーワードから紡がれるオムニバスストーリーである本作は日本の首都・東京を舞台に繰り広げられ、誰もが知る、あの街並みやあの景色がつぎつぎと登場する。

「東京タワー篇」では、身近にいるひとがどれほど掛けがえのない存在なのかを、幼馴染みという関係性から抜け出そうとする男女の気づきを描き、「新宿篇」では父と娘を通して互いの夢のすれ違いからはじまる儚さを、クスっと笑える優しさで包んでいる。

そして最後を締めくくるのは「お台場篇」。男7人の熱い友情と葛藤、さらには瞬間を生きる大切さを繊細に映し出しているが、主人公・リヒトを演じたのは山下幸輝。TBS系列のドラマ『君の花になる』(2022年)で劇中グループ・8LOOM のメンバー役で注目を集め、その後も話題作に出演している人気上昇中の逸材。劇中では華麗に披露するダンスにも目を奪われるが、仲間想いで迷いなく気持ちを表現する一途な姿に勇気づけられるはずだ。

人との繋がりによって芽生える温もりこそが愛。
希望に満ちた爽やかな感動が、あなたにとっての愛をそっと後押ししてくれるだろう。

文 南野こずえ

『TOKYO,I LOVE YOU』
出演:山下 幸輝、草野 航大、小山 璃奈、松村 龍之介、羽谷 勝太、坂井 翔、下前 祐貴、島津 見、西村 成忠
監督・脚本:中島 央
配給:ナカチカピクチャーズ
ⓒTOKYO,I LOVE YOU FILM PARTNERS
2023年11月10日(金)ロードショー

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